奈良市、市役所入り口の表札やめる 県内市部で例なし 芝生広場整備に伴う表示、柵に案内板
左上は奈良市役所入り口の柵に新しく取り付けられた案内板(2025年7月8日)、右下は芝生広場整備前の市役所の門にあった「奈良市庁」の表札(2023年3月)=同市二条大路南1丁目、浅野善一撮影
奈良市役所の芝生広場整備に伴う「奈良市庁」の表札撤去後の市役所入り口の表示を巡る問題で、市はこれまでのように表札を設置せず、柵に取り付けた案内板にとどめることにした。芝生広場を気軽に立ち寄れる開放的空間とすることを重視し、市役所を正面から名乗ることは控えめにした。県内市役所で見ると、表札がない例はほかにない。「奈良の声」は表札撤去後に市役所が名前のない状態になったことを取り上げた。市は仮の表示をするとともに新たな表示方法を検討していた。
芝生広場は広さ1700平方メートル。一昨年9月に着工し、昨年6月1日に利用が始まった。整備に伴って、それまであった噴水や木の植栽、石積みの門などが撤去された。表札は金属製の銘板(縦約45センチ、幅約2メートル)で、石積みの門に取り付けてあった。1977年の市役所開設当初からあったものとみられている。
芝生広場の整備を巡っては、仲川げん市長は市ホームページの市長コラム2024年5月号で次のように述べている。
「デジタル社会の推進が国も地方も叫ばれる世の中ですが、実際に昨年度は、(奈良市の)住民票の発行も約半数がコンビニでの交付となりました。これからは市役所に行かなくても、さまざまな手続きや相談等ができる時代になっていきます」「改めて『市役所とは何をする場所なのか』が問われます。子どもからお年寄りまで、用事の有無にかかわらず、誰もが気軽に立ち寄り、集い、交流できる新しい市役所像を築き上げたい」
市は、開放的空間にという芝生広場の狙いに対し「どこにどのようなデザインの表示をすれば調和させられるのか」を検討。市資産管理課長は、表示を恒久的なものにしなかった理由について「奈良の声」の取材に「表札のような銘板は設置しない。新しく整備した芝生広場に、昔風の表札は似つかわしくない。そこで案内板(の形態)でということになった。案内板で市役所の案内はできる」と述べた。
新たな案内板は今年3月末、市役所正面入り口の向かって左側の植え込みの柵に結束バンドで取り付けられた。縦60センチ、幅90センチのアルミ板に横書きで「奈良市役所」と表記し、その下に「正面玄関」「奈良市議会」それぞれの方向が矢印で示されている。
一方、「奈良の声」の確認では、奈良市を除く県内11市の市役所には、それぞれ表札に相当するものが入り口などにある(新庁舎の建設を目指している橿原は解体前の旧庁舎)。市役所名を刻んだ石の銘板が多い。特に桜井、五條の2市は奈良と同じような、くつろぎや交流を目的とした芝生広場もある。最近、庁舎建て替えに伴って整備されたものだ。
恒久的な表札がない中で、柵に取り付けただけの案内板は将来も維持されるのか、奈良市役所が再び名前のない状態にならないか。取材に対し、市資産管理課長は「案内板は(常に)必要と考えている」と述べた。
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