万博・奈良県催事の会場ソファ50個、3日間だけの使用で廃棄
今年5月の「オール・ナラ・フェスティバル」で会場のエキスポアリーナの人工芝の上に置かれたソファと利用する人たち=ユーチューブ「奈良県公式総合チャンネル」から
大阪・関西万博の屋外イベント広場「エキスポアリーナ」で今年5月にあった同万博奈良県実行委員会主催の「オール・ナラ・フェスティバル」の観客用に購入されたソファ50個が、3日間の催し終了後に廃棄されていた。「奈良の声」の取材で分かった。県は汚損状況や衛生面から廃棄したとしている。同万博では「持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献」が掲げられており、それに向けた取り組みの一つに排出する廃棄物の削減がある。
エキスポアリーナは、舞台を備えた広さ約2万2000平方メートルの人工芝の広場。「オール・ナラ・フェスティバル」は、県や県内市町村でつくる県実行委が万博期間中に開催する奈良県催事の一つで、5月27~29日に実施された。県内の伝統文化や食文化を紹介する舞台発表やブースの開設があり、3日間で計約5万2000人の来場があった。
ソファは「ヨギボー」の商品名で販売されているビーズソファで、柔軟性があり用途に応じて形を変えられるのが特徴。県実行委の事務局を務める県万博推進室によると、エキスポアリーナは広大なため、フェスティバル開催に当たって、催しをくつろいで観覧してもらえるようベンチや日よけを用意することにしたが、その一環で同ソファも採用された。
県催事の計画、運営は、県実行委から大手広告代理店を代表企業とする共同企業体に委託されており、ソファの採用は広告代理店の提案だった。あらかじめ委託限度額が決まっているため、万博推進室は「予算の範囲内であれば」という前提で了承した。同ソファのレンタルはないが、提案を了承した時点では同推進室にレンタルか購入かの認識はなかったという。ソファの購入費を含む2025年度分の委託料は、委託業務完了後に共同企業体が提出する実績報告書を基に支払われる。
購入したソファは高さ約95センチ、幅約65センチ、奥行き約55センチで、重さ約4.4キロ。「奈良の声」は購入価格についても万博推進室に尋ねたが、広告代理店から同推進室への説明は「回答できない」だったという。販売会社のホームページによると、同じ型のソファの販売価格は1個2万2990円(税込み)。屋外対応の商品でカバーに耐水加工が施されているという。
ソファを実際に使用できたのは最初の2日間だけで、3日目は天候状況から使用しなかった。廃棄に至った経緯について万博推進室は「奈良の声」の取材に「クリーニングも検討したが費用面から廃棄処分とした」と述べた。産業廃棄物として処理したという。ソファの所有者は県実行委になる。
万博が目標とする廃棄物の削減という点については、同推進室長補佐は「催事の企画段階で廃棄を前提にソファの準備が進められていたものではない」と述べた上で、広告代理店からは「催事当日に細かい雨が降った時間帯もあり、ソファが汚損していた。また多数の人が使用して、クリーニングをしても衛生面での不安が残ることから廃棄処分したとの報告があった」とし、廃棄について「県としては妥当な判断と考えている」との見解を示した。
フェスティバル当日の運営には県が募集したボランティアも参加しており、「奈良の声」はその1人の男性から「会場で運営スタッフから『ソファは催しの終了後、廃棄される』と聞いた」との情報を得た。これを受けて万博推進室に事実関係を確認していた。男性は取材に対し「廃棄はエコという観点からも万博の運営趣旨に反しているし、税金の使い方としてもいかがなものか。廃棄ではなく、ほかのパビリオンに譲るとか考えられなかったのか」と述べた。
来場者が並ぶ大阪・関西万博会場の入り口=2025年8月3日、大阪市、浅野善一撮影
筆者情報
- 浅野善一
- 電話 090-7767-8403
- メール asano-zenichi@voiceofnara.jp
- ツイッター @asano_zenichi