奈良県産廃処理補助金 安堵町への交付、要綱が定める対象に該当せず ~2020年度
奈良県庁(左上)と安堵町役場=浅野善一撮影
奈良県安堵町が合成皮革くずなどの排出業者の組合に交付していた産業廃棄物処理の補助金を巡る問題で、その一部に充てられていた県の産業廃棄物処理事業県費補助金について、同補助金交付要綱が定める補助対象に町が該当していなかったことが「奈良の声」の取材で分かった。県費補助金は2020年度まで町に交付されていた。
町、処理に直接関わらず、排出業者の組合に補助金交付
問題の発端は、安堵町が2020年度に町同和地区産業廃棄物処理組合に交付した補助金の一部が、住民訴訟の判決で違法な支出とされたこと。判決は、実際には組合からの廃棄物の排出・処理の事実がないのに補助金を支出して町に損害を与えたというもので、西本安博町長が賠償責任を負った。
「奈良の声」が開示請求で入手した同県費補助金の交付要綱によると、県は、履物製造業者や皮革加工業者が排出するヘップサンダルくず、または皮革くずを、市町村が自ら処理する場合、または処理業者に委託して処理する場合、県が定めた処理単価を基に最大で処理経費の2分の1を補助するとしている。
一方、安堵町は県費補助金を組合への補助金の一部に充て、組合が業者に処理を委託していた。町は処理に直接関わっておらず、市町村が自ら処理する場合、または処理業者に委託して処理する場合のいずれにも該当していなかった。町の「産業廃棄物排出業者に対する補助金交付要綱」(住民訴訟判決後に廃止)も「処理組合が業者に委託した経費の一部を交付する」と定めていた。
県廃棄物対策課や安堵町へのこれまでの取材によると、町への県費補助金の交付を確認できるのは、県に残っている記録から2014年度以降といい、同年度が33万6000円、2015年度が31万9000円、2016~20年度が各36万円。この県費補助金を合わせた町から組合への補助金は2014~2019年度がいずれも361万2000円、2020年度が325万800円だった。
町が県費補助金の交付要綱が定める補助対象に該当しないため、県に提出された2020年度の県費補助金交付申請書の記載には整合性のない箇所があった。住民訴訟の原告住民が県への開示請求で入手した同申請書などで確認できた。
申請の様式は交付要綱で定められている。事業計画書の「委託先名」の欄には、市町村が業者に処理を委託する場合に業者名などを記載するが、町は補助金の交付先である組合の名前を記載していた。一方で、収支予算書の「支出の部」の内訳では、事業費は「委託費」ではなく「負担金補助交付金」に全額が計上されていた。
県廃棄物対策課は取材に対し「安堵町の交付申請書の内容から、町の処理事業が組合への補助金交付によるものであることは読み取れる。当時の担当者も把握して交付を決定している。組合に補助金が交付されることで、産業廃棄物の適正な処理が図られるという町の処理事業の目的は、県の交付要綱の趣旨に沿っていた」と述べた。
一方、安堵町は「県費補助金の交付申請当時は、交付要綱の対象事業であるとの認識だったが、町が直接、処理事業をしていないので、(取材を受けて)今あらためて要綱の交付要件を見る限りでは、補助の対象事業ではなかった」と述べた。
県費補助金の交付を受けてきた市町村は、安堵町のほかに御所市、宇陀市、三郷町、上牧町がある。「奈良の声」は安堵町以外の4市町それぞれに2022、23年度の交付申請書などを開示請求した。4市町では交付要綱通りの処理事業が行われていた。
御所、三郷、上牧では、ヘップサンダルくずなどの排出業者がそれぞれの市または町の処理施設にこれらの産業廃棄物を持ち込み、各市町はその処理を業者に委託していた。宇陀は市設置の毛皮革くず処理施設があり、排出業者でつくる組合を指定管理者として管理運営を委託していた。
補助金は県に返還
安堵町への県費補助金交付を巡っては、住民訴訟の判決をきっかけに、県がそれ以前の交付についても処理実態の確認を求め、これに対し町は県に報告した処理量が推測で根拠を示せないと回答、2014~20年度の補助金全額245万5000円を昨年11月に返還している。町が2020年度の補助金請求で県に提出した実績報告書は、毎月の処理量がすべて同じという不自然さもあったが、請求の時点では県は補助金を交付している。現在、組合の活動実態はない。
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