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第3回「奈良の声」読者会の報告~読者が開く読者の集い

浅野善一

地域振興券に「見本」印刷混じるも公表せず 奈良県広陵町「極めて少数、かえって混乱」 使用可能で対処

奈良県広陵町の地域振興券取扱店に張られたポスター。左下は町ホームページの地域振興券の案内ページに掲載されている見本。これと同じものが配布された振興券に混じっていた=2026年4月28日、同町内、浅野善一撮影

奈良県広陵町の地域振興券取扱店に張られたポスター。左下は町ホームページの地域振興券の案内ページに掲載されている見本。これと同じものが配布された振興券に混じっていた=2026年4月28日、同町内、浅野善一撮影

 奈良県広陵町は、町発行の地域振興券(商品券)に「見本」と印刷されたものが混じっていることを住民への配布後に把握したが、公表しなかった。「奈良の声」の取材で分かった。町は、「見本」券は極めて少数であるとして、公表すればかえって混乱を招くと判断した。対処としては、住民から問い合わせがあれば交換することとし、取扱店には受け取った場合は換金に応じると伝えた。

 同振興券発行は国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を使用した取り組み。額面は1万円で町に取扱店登録をした町内の店で使用できる。今年2月に全住民約3万5000人に配布された。3月1日から6月30日までを使用期間としている。

 振興券に「見本」券が混じっていることが明らかになったのは3月16日の町議会総務文教委員会(河野伊津美委員長、7人)。町から報告があった。「奈良の声」記者は委員会を傍聴していた。町議会のインターネット録画配信は本会議のみのため、報告があったことは当日その場で委員会を傍聴していなければ分からない。傍聴者はほかに1人いただけだった。

 委員会での町の説明や担当の町産業総合支援課への取材によると、「見本」券は通常の振興券の印刷面の上に「見本」の文字が印刷されていた。町が把握したのは3月1日の振興券利用開始後間もなくで、券が使用された店から連絡があった。住民は気付かないまま使用したのではないかという。

 町が振興券の印刷を発注した業者に確認したところ、券に切り離し用のミシン目を入れる際に原本保護のため原本の一番上に載せた「見本」券を、取り除かないまま誤って振興券の冊子の中にとじてしまった可能性があるとのことだった。

 振興券は500円券20枚1万円分が1冊にとじられていて、うち10枚がすべての取扱店で使用できる共通券、もう10枚が中小の取扱店でのみ使用できる限定券。1000円の支払いにつき振興券1枚が使える。「見本」券が混じっていたのは共通券の方で、配布した35万枚のうち少なくとも6枚、最大で60枚が混じっている可能性があるとみられた。

 町は対応として3月12日付で取扱店に対し、「見本」券を受け取った場合でも換金に応じることを伝え、使用があった場合は柔軟に対応してほしいと依頼した。「見本」券は「見本」の文字以外は、正式な券と同様、偽造防止が施され、通し番号が記されている。また、住民から問い合わせがあれば交換することとした。

 総務文教委員会では、町の報告に対し委員から「住民に周知しなくても大丈夫か」との質問があった。町の担当者は「それも考えたが極めて少数であることから広く知らせることによる混乱、考えすぎかもしれないが、それを知った悪意のある第三者が現れることも考えられる」と答弁した。委員から意見はなかった。

 産業総合支援課によると、4月28日までに使用が確認された「見本」券は計3枚ほど。住民からの問い合わせや振興券の交換はないという。配布された振興券はこれまでに3分の1が使用されたという。

 「奈良の声」はあらためて同課長に対し、振興券に「見本」券が混じっていたことについて公表すべきではなかったと質問したが、課長は「委員会での答弁の通り」と述べた。

筆者情報

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