注目の奈良高畑ヴォーリズ建築あるじ、画家栗盛設計の講壇 隣のキリスト教会で現役

栗盛吉蔵が考案、設計した講壇=2026年2月21日、奈良市高畑町の奈良高畑教会、浅野詠子撮影
米国出身の著名な建築家、ウイリアム・メレル・ヴォーリズが設計した奈良県内で唯一とされる奈良市高畑町の日本画家栗盛吉蔵(1897~1974年)の旧居保存運動が注目を集める中、栗盛が設計した講壇が隣の奈良高畑教会に現存、今も礼拝時の牧師説教に使われている。
同教会によると、製作された年代と材質はまだ分かっていない。「奈良高畑教会史―宣教80周年記念」(2003年刊行)によると、講壇は栗盛が考案、設計し、実物大の構図を日本画で描いた。これを基に中尾さんという高畑町の建具技術者が製作したという。
栗盛は熱心なクリスチャンで同教会の信徒総代も務めた。秋田県大館市の実家は素封家として知られ、栗盛は、自宅兼画室を建てるために取得した土地の一部と教会新築費を寄付。教会は栗盛旧居とほぼ同時期の1936年の建築で、旧居と同様、ヴォーリズ建築事務所(本社・滋賀県近江八幡市)が請け負った。
講壇は画家らしい装飾を凝らしたデザイン。高さ87センチ、幅73センチ、奥行き46センチで、2段になった台座の上の四隅に円柱を配し、正面の浮き彫りの文様が目を引く。説教台とも呼ばれる。講壇のある礼拝堂は90人が集うことができる。教会建物は老朽化のため1991年に建て替えられたが、講壇は引き継がれた。新しい建物の設計も、現在まで続く同建築事務所が行った。

1972年当時のヴォーリズ建築の奈良高畑教会(「奈良高畑教会史―宣教80周年記念」から)
「奈良高畑教会史―宣教80周年記念」の中に、栗盛ゆかりの当初の教会建物の全景写真が掲載されている(撮影は1972年ごろ)。瓦屋根の小ぶりな建物で、ヴォーリズ建築に詳しい山形政昭氏(関西学院大学国内客員教授)は「高畑町の景観に配慮した簡素なデザイン」と話す。
藤川義人牧師は「栗盛設計の講壇は重厚な雰囲気があります。歴代の牧師がここに立ち、聖書の解説をしたり祈りを捧げたりしました。メンテナンスとしては、特に何もしていないので、まさにメンテナンスフリーです。不思議にも、正面の浮き彫りの装飾部分にほこりがたまることがありません。このことは、記念品として安置しているのではなく、現在も現役で、説教台が用いられているからなのかもしれません」と話している。

礼拝堂にある講壇(左)と牧師の藤川さん=2026年2月21日、奈良市高畑町の奈良高畑教会、浅野詠子撮影
筆者情報
- ジャーナリスト浅野詠子
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