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浅野善一

居眠りの議員にスマホ向け「税金泥棒」、SNSで動画さらす 「元迷惑系YouTuber」名乗る奈良市議、会議中に決まり守らず撮影

奈良市議会議場=同市二条大路南1丁目、浅野善一撮影

奈良市議会議場=同市二条大路南1丁目、浅野善一撮影

 「元迷惑系YouTuber」を名乗る奈良市議会議員がこの9月定例会本会議で、居眠りしていた1人の議員を、議会の決まりを守らず立ち歩いてスマートフォンで撮影、SNSでさらすという行動を取った(一部既報)。投稿された動画には、議員に向かって「税金泥棒」と話しかける音声も入っていて、コメント欄には「辞職してください」の記述。議員を起こすためなら、その場で議長に注意を促すことができる。“正義”に独断がにじむ。

 居眠り自体は弁明できない行為のため、議会は今後、居眠りしている議員に対しては、その役割の議員が起こすなどの対応を取ることを申し合わせた。一方、会議中に立ち歩いてスマートフォンで撮影する行為は、現在でも市議会会議規則や「会議中における情報通信機器の使用基準」(申し合わせ)に反するが、より明確にするための規定の新設について協議することになった。

 撮影行為があったのは9月10日の定例会一般質問で質疑応答が行われている最中。議会事務局によると、へずまりゅう議員(無所属)は、答弁台で発言中の市環境都市推進部長の前を横切って、議員席最前列の居眠りしている議員の元に赴いた。

 「奈良の声」記者がいた傍聴席(記者用)からも、へずまりゅう議員がその議員に間近からスマートフォンらしきものを向けている様子が見えたが、何が起きているのかすぐには分からなかった。傍聴席のすぐ前、気付いた議員席最後列の議員の1人は驚いた様子で隣の議員に話しかけていた。

 SNS「X」への投稿は2日後の12日。動画の長さは12秒で、目を閉じてうつむいている議員が大写しになっていて、「おはようございます。寝ちゃだめですよ。税金泥棒ですよ」と話しかける音声が入っている。へずまりゅう議員の言葉はこの議員1人に向けて発せられたものだが、会議の討議での発言であれば地方自治法は「無礼の言葉」の使用を禁じている。

 動画には周囲の議員の様子も映り込んでいる。答弁中の市環境都市推進部長のものとみられる音声も入っていて、これが続く中、背後に映っている複数の議員がへずまりゅう議員の方に目をやるなど、会議に集中できなくなっている状況が分かる。

 動画に添えられたへずまりゅう議員のコメントには、議員の名前と「居眠り議員を起こしました。税金の無駄なので辞職されて下さい(原文のまま)」との記述があるのみで、いつの何の会議のときのことなのか、どのように撮影したのかは不明。現職、前職2人の市議会議員への取材では、これまでに議会内で居眠りに関しこの撮影された議員が特別に問題にされたことはない。

 投稿の表示回数は10月18日現在で949万回、リポスト(再投稿)は2万件に上っている。

 へずまりゅう議員が動画を撮影後、投稿するまでには次のような経緯があった。

 議長には、議場の秩序を乱す議員がいれば制止する権限がある。9月10日の撮影行為があったときの議長は副議長が務めていた。発生時には行為の制止に至らなかったが、この後の休憩時間に八尾俊宏議長が居眠りしていた議員に注意をするとともに、へずまりゅう議員に対し、撮影は会議の目的以外の情報通信機器の使用に当たるとして動画の削除を求めた。へずまりゅう議員は拒否した。

 八尾議長は翌11日の本会議の冒頭にも、名指しはしなかったが、居眠りを慎むこととともに、会議中にみだりに席を離れたり、情報通信機器を会議の目的以外に使用したりすることがないよう注意喚起した。「奈良の声」は同日夜、ここまでの経緯を記事にして掲載した。へずまりゅう議員は翌12日、動画を「X」に投稿した。

 定例会最終日の9月30日、議会運営委員会は本会議前の会議で今回の一連の問題を議題とした。道端孝治委員長は、居眠りについては会議規則が規定する「議会の品位」をおとしめる恐れがあるとして、厳に慎むよう要請。居眠りと思われる行為を発見した際は、同委員会正副委員長が様子を確認にいくと説明した。

 会議中に他の議員を撮影する行為については、道端委員長は、議事運営に影響を与える可能性や撮影された議員との間でトラブルに発展する恐れがあるが、会議規則や「情報通信機器の使用基準」には明確に規制するような項目がないとした。このため、拘束力を持たせた形で新たに規定を設けるべきとの申し送りを議長から受けたと説明、閉会中に協議するとした。

 八尾議長は「奈良の声」の取材に対し「(1975年に施行された)市議会会議規則はインターネットやSNSを想定しておらず、情報通信機器の使用についてルールが確立されていない。やりたい放題になるのはいかがなものか。議会運営委員会に見直しを指示した」と述べた。ただ、今回の動画の投稿については「議員個人間の問題。議会(内)で起こったことが議長の(職務の及ぶ)範囲。公開してはいけないとまでは言えない」とした。

 居眠りの動画を投稿された議員は取材に対し「起こすだけで良かったのでは。動画の投稿は炎上させるのが目的ではないか」と述べた。法的な対抗措置については「炎上の材料を提供するようなもの。そこにエネルギーを注ぐことはしない」とした。

 地方自治法や同市議会会議規則には議場の秩序を保持するための規定がある。議事の妨害となる言動をしたり、みだりに席を離れたりする行為は禁じられている。秩序を乱す議員がいるときは、その場で議長に対し注意を喚起することが認められており、居眠りを問題にすることもできる。居眠りを理由に辞職を求めるのであれば、辞職勧告決議を求める議案や懲罰(最も重いのが除名)を科す議案を提出することが可能。

 へずまりゅう議員に対しては、10月8日に議会事務局を通じて取材の希望を伝えた上で、記者からも直接携帯電話に電話しているが、記事掲載までに返事はなかった。

 へずまりゅう議員は2025年7月の市議会議員選挙で初当選した。

筆者情報

奈良市議会質疑中に議員が席を離れ、他議員をスマホで動画撮影

奈良市議会議場=2026年9月10日、同市二条大路南1丁目、浅野善一撮影

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